料理⑩ フライパンその3

お久しぶりです。

新年度が始まって恐ろしいほどに忙しい1ヶ月が終わりました。

みなさんの職場はどんな感じでしょうか??

 

鉄のフライパンは、まず安い。笑。

熱が伝わりやすく、グダグダしないで料理ができます。

軽くて扱いやすい。

手入れが簡単。硬いたわしでもガシガシ洗える。

そして、ちゃんと手入れすれば、まったく焦げ付かないし、長持ちします。

テフロンなどの特殊加工品は、扱いがデリケートで、

そのわりに剥がれてダメになるのも早い。

中には強火にしちゃダメというものもあり、それじゃ使えんだろ…と思うことも。

 

鉄鍋は最初の火入れと、時々やる焦げ落としが気持ちいいです。

最初コンロでガンガンに火で焼いて、

さらにオーブンに突っ込んでキンキンに焼き上げます。

油を馴染ませ、火入れをしを繰り返すと、

なんとも言えない艶々ないい色になります。

しばらく使っていると、底の部分にコゲがついてくるので、

そいつも火入れしてこそげ落とします。

これが気持ちいい。そしてまた艶々に戻ります。

 

料理が終わったらすぐお湯で洗う。

そして、火を入れて乾かす。

これを疎かにしてはいけません。

これは最初めっちゃ言われました。

そんなこんなでフライパン編は終わり!!

料理⑨ フライパンその2

普通にフライパン振れるだけではダメで、

まあそれはオープンキッチンだからなんですけど、

振るというよりは、あおるというか、

派手な感じが求められるわけです。笑。

 

コンロのあるところは、強化ガラスで囲われていて、

カウンターのお客さんの目の前で料理します。

油とかは飛びませんけど、熱気は伝わります。

ピラフ(ほんとは炊く料理だけど)とか米をいためる料理の時は、

見た目を良くするためにパラパラっと宙に飛んでる感じにします。

(米粒に直接火を当ててパラっとした食感にするためでもあるんですが)

フライパンもただ前後に振るだけでなく、

左右斜めに振ったりしながら動きを大きくしてました。

 

肉料理の時は、焼き上がりのフランベも盛大に目の前でやります。

わざとフライパンをゆすって火を大きくしたりなんかして…

「おーっ!」ってなります。

 

フライパンを大きく振る料理ではないけど、

オムレツはとても難しく、

でも、これができるようになると感心してもらえます。笑

 

フライパンはかなりの種類があって、

それぞれの目的と使い方をマスターするのは結構時間がかかります。

でも、材質は一つで、すべて「鉄」でした。

家庭料理では、アルミ製やステンレス製もありますね。

そして、こびりつかない加工がしてあるのが普通です。

でも、たぶんほとんどの料理屋さんでは鉄製で、

余計な加工がしてないのが一般的だと思います。

鉄のいいところは…

(続く)

 

 

料理⑧ フライパン

ロード三世はオープンキッチンになっていると書きましたが、

カウンターのある居酒屋だったらよくある形かもしれません。

でも、うちの店は本格的にオープンで、

要するに、コンロもまな板も、すべてカウンターのお客さんのほうを向いているのです。

たいていのオープンキッチンは、

お客さん側はドリンクをつくるところであったり、

せいぜい料理の盛り付けをするところというのが普通ではないでしょうか。

ロードはそれが全部反対で、

包丁捌きも、フライパイ捌きも全部お客さんの真前でやるので、

すべて丸見えになります。

ですから、お客に向かって「見せる」ことが必要になります。

下手なことはできないのです!!

 

包丁に次いで重要なのが、フライパンです。

ここをかっこよく見せることが求められるのです。

でも、そんなん最初からできるわけもなく、

広田さんによる修行が始まるのです。笑

 

まず最初は、ダスター(台拭き)でやります。

フライパン振りは、パンの先の方の壁に具材を当てて、

それを素早く引いてひっくり返したり煽ったりします。

具材をどうやって前に移動するか、

どうやって引っ掛けるか、

角度であったり、スピードの緩急であったり、

けっこう細かな動きが必要で、

これは慣れないとなかなかコツはつかめません。

ダスターの次は氷です。

これはめっちゃいい練習になります。

具材を前に動かして、

どのタイミング、どの角度で引けばいいか。

滑りがとてもいいので、

気を抜くとすぐ具材が元の場所に戻ったり、

前に飛び出していったり。。。。

 

氷の次はパン粉。

だんだんと、こぼしたらヤバイもので練習していきます。

次が生米。

「これ、こぼしたら、今夜の食事は無しね」

とか広田さんがビビらせてきます。

最後にまかないの食事をしばらくつくって、

ようやく合格したら、お客さんの料理をつくらせてもらえました。

ここまででだいたい1ヶ月ちょいくらいでしょうか。

週3か4日やってましたから、

なかなかいいセンスではないでしょうか(自画自賛

ようやくまともに振れるようになりましたが、

でも、まだこれだけでは不十分なのです。

(続く)

 

料理⑦ レシピ

そのおじさん、ロード三世にどれくらいいたのかよくわからないのですが、

たぶん、この人がこの店の味をつくってきたんでしょう。

広田さんが入ったときには、普通の五徳のあるコンロだったそうですが、

このおじさんがいるときには、

ここはただの鉄板で、

この鉄板の上でハンバーグ焼いたりピラフつくったり、

すべての「焼く」「炒める」料理をここでつくっていたそうです。

だからオープンキッチンになってるんだなと思いました。

 

この人が残したものが、そう「レシピ」です。

洋食のソース類(デミグラスソース、ピザソース、ミートソース、カレーなど)は全部浅野さんがつくっていましたから、

このおじさんがレシピとして残していたのは、

和風のソース類とドレッシング類、

そしてすべての料理のつくり方です。

大学ノートにびっしりと書き連ねてありました。

まあ、だけど、これ見ながら料理つくるわけではないのですが、

(料理のつくり方はすべて広田さんに教えてもらうだけ。広田さんもたぶん誰かに教えてもらったはず)

情熱というか、自信というか、自負というか、そんなものを感じてしまうノートでした。

あ、ピザ台とか、分量がはっきりと書かれているのは見てやってたな。

そして、広田さんがいなくなってひとりになってから、

時々引っ張り出して、参考にもしていました。

当時ない料理も載っていたので、

いろいろ想像しながら読むのはおもしろかったです。

(続く)

料理⑥ 包丁研ぎ

包丁ネタでもうひとつ。

ロードには数本の包丁があって、

それらは当然自分たちで研ぎます。

そんなんやったことないので、

これも広田さんに教えてもらいました。

やり方はまあ、そんなに難しくはないのです。

丁寧さがあれば誰でもできます。

 

 

前回話した、ペティナイフのことですが、

実は、ロードにはおもしろいペティナイフがあって、

そのナイフ、刃渡りがたったの3cmくらいしかないのです。

最初見たときは、そういう形のナイフなのかなと思いましたが、

広田さんによれば、これは以前いたコックさんのお気に入りで、

ずっと使っては研いでを繰り返すうちにこうなっったのだと。

すごいですよね。

長さもそうですが、厚さも相当なもんで、

もうね、ぺらぺらなんです。笑

そこまで使うほど愛着があったんですね。

 

あと、この形に研ぎ続けるって実はけっこう難しくて、

包丁研ぎが下手くそだと、

包丁って、真ん中が凹んでくるんです。

どうしても真ん中ばかりに手を添えてしまうので、

真ん中だけに力が入って、そこだけが研がれていくのです。

ですので、このペティナイフを使っていた人、

なかなかの料理人だったらしいです。

そのおじさん(お年を召した方だったらしい)、

もう一つ、私たちに残したものがあったのです。

(続く)

 

料理⑤ 包丁

私自身の高校生までの料理経験は、

インスタントラーメン、目玉焼き、卵焼き、野菜炒めくらいのレベルです。

料理にはまったく興味がなかったし、

親からもやってごらんとも言われませんでした。

まあ、貧しい家でしたので、食に関してはお粗末なものでした。

 

料理で最初に教えてもらったのは、

広田さんがつくったものを盛り付ける仕事。

でも、これは料理じゃないな。

 

やはり、盛り付け前の、「包丁」、「火」の扱いがないと。

で、最初に包丁です。

厨房には、刃渡り30cmほどの牛刀と、

ペティナイフが2、3本ありました。

それ以外にもありましたが、普段使いはその程度です。

さて、牛刀でスパスパいくかと思うでしょうが、

牛刀は肉切ったり、野菜をザクザク切ったりとか、

力が必要なときにしか使いません。

料理のほとんどはペティナイフで済ませます。

この、ペティナイフが何にでも使えるようになると本物だよ、

と言われました。

最終的に、私は、まったく牛刀を使わなくなりましたので、

その意味はよくわかります。

 

包丁使いで、一番練習になるのは、

キャベツの千切りと、玉ねぎのみじん切り。

一番というのは、まあ、その作業が毎日あったからなんですが。笑

次の日のランチに使うキャベツの千切りを、

夜の部で大量に作ります。

「千切り器」なるものが世の中にありますが、

そいつらが切るよりもさらに細い千切りを切ることがノルマです。

最初は牛刀握るのもおっかないので、(めっちゃ切れる)

ビビリながらの作業です。

不思議なもので、ビビってるとよく指までスライスします。

まあ、よく切れるので、下手に力を入れなければ怪我はしません。

ビビって力が入ると怪我しちゃう‥そういう感じです。

最初のうちは、私の指の皮のスライスや、

爪のスライスが入ったサラダを食べた方も多かったと思います。笑!

でも、1ヶ月もかからないくらいで、

手元を見なくても切れるようになりました。

細さも広田さんくらいに切れるようになりました。

玉ねぎのみじん切りは、ハンバーグの材料です。

一応ハンバーグはうちの店のメインで、

美味しいと評判だったので、ランチの分と合わせて、

大量の玉ねぎのみじん切りが必要になるのです。

これは気持ち良い作業です。

ペティナイフを使うのですが、

よく切れるので涙も出ません。

 

いい包丁は、とても気持ちいいです。

いい包丁というのは、よく切れるだけじゃないと思います。

なんだろう、握ってみて自分の手にしっくりくるというか、

自在に扱える快感を与えてくれるもの、

かな。

(続く)

 

料理④ 広田さん

ロードには、私以外にもう一人アルバイトの学生さんがいました。

その人が、広田さんです。

八王子の、工業系の大学の、3年生でした。

この人に、私は料理を教わりました。

料理というか、「仕事」の仕方ですね。

「料理」について本格的に教わるのはもう少し後のことです。

 

広田さんに、仕事のいろはを教えてもらいました。

最初は、見てるだけ。

洗い物をしながら、客の接待をしながら。

広田さんはとっても無愛想な人で、

なかなかにとっつきにくい人でした。

この人と楽しげに会話したことは1年間くらい一緒に仕事した中で、

数度しかありません。

 

ですので、基本教えてくれない・・・

ママさんがいたので、わからないことはママさんに聞いてました。

広田さんの料理は、仕事の料理。

如何に早く、多数のメニューを同時に出すか。

これはすごかった。

なので、あんまり味を追求しようとか、

見た目を綺麗に盛り付けようとか、

そこはどうでもいい感じ。

手際よく、無駄なく、スマートに料理を出す。

レシピはあったので、その通りにやればいい。

そんな料理です。

 

でも、いつまでも教えないと、

自分がずっと料理してなきゃいけないので、

少しずつ私に料理を教えてくれるようになりました。

(続く)