天使のにもつ

 

天使のにもつ (単行本図書)

天使のにもつ (単行本図書)

 

 主人公は中学2年生の男の子。

かなりいいかげんな能天気な子。

5日間の職業体験で、ラクそうだからという理由だけで、

「エンジェル保育園」を選択してしまった…

悪戦苦闘の5日間の中で、

保育の現場の難しさや厳しさ、でも、豊かさあたたかさも感じていく…

という感動ストーリーが想起されますが、

そんなに深掘りせず、

中学2年生の男の子の理解程度で物語が進んでいきます。

メインストーリーは、ネグレクトの4歳の男の子との心の通い合いなんですが、

その子自身の思い、その子のお母さんの思いはまったく書かれていません。

2人を取り巻く環境についても一切詳しく触れていません。

保育園の保育士さんも、その話題に主人公が食いつくと、

「まあ、いいから」的に流してしまいます。

主人公も「カンケーねーし」と深追いしません。

「浅い」といえばそうなんですが、

最近の児童文学作家やYA作家の作品って、(ファンタジー作品を抜きにして)

このいい意味での「リアルさ」が読者の共感を呼んでいるような気がします。

主人公が劇的に(環境や年齢や常識を度外視して)状況を理解して、

劇的に行動を起こして、

劇的な展開が起こり、

劇的な結末を迎える、

的な、そんなものより、

主人公が身の丈(最近問題になった言葉。笑)程度の理解をして、

身の丈程度の行動を起こして、

身の丈程度の展開が起こり、

身の丈程度の結末を迎える、

的なお話、こういう話の方が、リアルで共感を呼んでいるような気がします。

 

「オレはなんにもしてやれない。なにかしてやれるほど、大人じゃない。なにが正しくて、なにをすることがこいつのためになるのかもわからない。守ってやる力なんてない。だいたいオレはアホだし。でも、いまこの瞬間にしてやれることだったらわかる。いまできることは、笑って、しおん君が握ってきた小さな手を、しっかり握り返す。それだけだ。」

 

そう、それだけ。(^ ^)