夏の庭

夏の庭―The Friends (新潮文庫)

夏の庭―The Friends (新潮文庫)


湯本香樹実さん、前々から読みたいと思っていて読んでなかった人。
もう15年前以上の刊行です。


今まで読んだYAの作家の中では一番読みやすいかも。
内容もリテラチャー・サークルには最適だと思います。
子供たちをほんとに生き生きと描写していますね。
子供を子供っぽく書いているのがいいなぁ。
子供の読者も等身大に自分に投影できるでしょう。
ラストシーンはほんとに子供だった。


「ずっと昔、ぼくがまだ小さい頃、死ぬ、というのは息をしなくなるということだと教えてくれたおじさんがいた。そして長い間、ぼくはそうだと思っていた。でも、それは違う。だって生きているのは、息をしているってことだけじゃない。それは絶対に、違うはずだ。」



「ホースの角度をちょっと変えると、縁側からも小さな虹を見ることができた。太陽の光の七つの色。それはいつもは見えないけれど、たったひと筋の水の流れによって姿を現す。光はもともとあったのに、その色は隠れていたのだ。たぶん、この世界には隠れているもの、見えないものがいっぱいあるんだろう。虹のように、ほんのちょっとしたことで姿を現してくれるものもあれば、長くてつらい道のりの果てに、やっと出会えるものもあるに違いない。ぼくが見つけるものを待っている何かが、今もどこかにひっそりと隠れているのだろうか。」



人の死を扱った作品をこれほどまでに静謐に美しく情緒豊かに著した作品はないかもしれません。
登場人物が子供で、子供向けに書かれているからだけではないような気がします。