対立が力に

学級目標を設定する前に、クラスで複数の問題が起こりました。
PAのイニシアティブでは本音のぶつかり合いが毎回起こりました。


とてもいい機会だったので、学級通信を毎日出してみんなで考えました。
問題はチャンスです。
学級目標にもこのときのみんなのもんもんとしたことが反映されています。
前向きにね。



では、そのときの学級通信を一挙に6号連続掲載します。
長いのであきずに読んでくださいませ。
なお、文中のAKIRA氏は、長尾彰氏のことで、
もとになった文はこちらで読めます。

http://akirawebjournal.weblogs.jp/akira_web_journal/2009/05/post-f669.html

AKIRAありがとう!!


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かっぱの山のぼりNO‘13


 対立が力に① 


 ここのクラスには、39人の子どもと1人の大人がいます。今年の4月7日に、ぐうぜんこのメンバーは一つの教室に集められ、一つの大きなグループとして共同生活をスタートさせました。ともに学び、ともに遊び、生活をともにしてきました。家で起きて家族と過ごしている時間より、学校でクラスメイトと生活している時間のほうが長い、そういうあいだがらです。先生も、自分の子どもたちより、このクラスの子どもたちと生活している時間のほうがはるかに長いです。



 その4月7日のことを覚えていますか? 自分がまず最初にやったことは、何だったでしょう? 始業式の前に、新しいクラス名ぼを渡され、一番最初にしたことです…。たぶんみんなは、自分と仲のいい友達が、自分と同じクラスになっているかどうかを確認したことでしょう。自分が安心して時を過ごせる相手の名前を名ぼの中からさがしたはずです。そして喜び、または残念がったり…。さらにこの先の一年間に対してなんとなく安心したり、逆に不安になったり…。



 5年の最初のころはみんな、自分の居場所(いばしょ)をさがしたり、確かなものにしたりするのに必死だったんだろうと思います。なやんだ人もいたんだろうと思います。そして時がたち、なんとなく自分の居場所がかたまったところでクラスが落ち着いた。この状態になるまでの間を
          
           
            「フォーミング」 


の状態といいます。ピッチングのフォームとか、走る時のフォームとか言うでしょ、あのフォームです。ユニフォームとかでもなんとなくふんい気わかるかな? 固い言葉で言うと「形式」とか「様式(ようしき)」とか言います。外から見るとこの状態はとても落ち着いていて、物事がとてもスムースに進んでいっているように見えます。争いごともなく平和な集団に見えます。それでいいじゃん!と言ってしまえばそれでいいのですが、そうも言ってられません。この状態の特ちょうは、自分の居場所(いばしょ)をなくさないために個人の努力がついやされます。自分の損得(そんとく)で行動を判断し、自分や自分の安心できる集団の損(そん)にならないようにふるまいます。全体としてはとても形式的で、決まり切った行動しか取れなくなります。



 自分にとっていごごちのよい安心できるところを「Cゾーン(コンフォートゾーン:安心ゾーン)」といいます。この中にいれば、安心して何でもできます。失敗も平気ですることができます。それはどうしてかというと、それをゆるしてもらえるからです。だから安心して行動します。今あなたはクラスの中にCゾーンがどれくらいの広さでありますか? クラス全体があなたのCゾーンですか? それとも仲のいい友達の中、数人くらいですか? 
 さて、フォーミングの状態は、クラスにどのようなえいきょうをあたえていくのでしょう。次号にて!!



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かっぱの山のぼりNO‘14


 対立が力に② 



 フォーミングの状態が固定化すると、クラスにだんだんと悪影響(あくえいきょう)ができてきます。見た目は落ち着いているように見えるこの状態ですが、裏では(目に見えないところでは)いろんなことが起きています。自分の居場所を守るために、いろいろと手をつくさなければならないからです。



 仲間意識を強いものにするために、一番てっとりばやくて、かんたんな方法は…「共通の敵」をつくることです。かげでこそこそと作戦会議が始まります。「あいつ、うざい」とかげで言ってればまだましですが、より仲間意識を強化するためには、表立ってその対象の子に、二人(以上)で同時に攻撃をします。ようするに共同戦線をはる。そうすると、きずなはさらに強固になります。きたないきずなですが・・・。おもしろいことにこの攻撃は、絶対に一人で行われることはありません(笑)



 逆に1対1になったとき、逆に気まずい思いをするのは攻撃をしているほうです。悪いことしていると自覚があるからです。そしてこの共通の敵は、自分につごうのいいように、くるくると変わっていきます。気をつけないといつのまにか自分が攻撃対象になっていたりします。なので、とうぜんそこには「ウソ」がいっぱいちりばめられます。かげぐち、ないしょ話、あやしげな手紙・メモ、無視…いろんなものがクラスを飛びかいます。こうなると、もう信じられるものがなくなってきます。そこで信じられる保証をつくるために、「親友だよね」→「親友だよ」という不思議な手紙が飛びかい始めます。「私のこと好き?」→「もちろん、ずっと大好きだよ、ずっと仲良しだよね」と、紙に書いておかないと安心できない状態になります。毎日、毎時間でも「確認」しないと不安で不安でしょうがない状態になります。休み時間になると、手を組んで歩いている人たちがろうかをはばいっぱい歩いている光景がよく見られるようになります。そうしないと安心できないのです。いっときたりともはなれられなくなる状態が続きます。こうなるともうクラスの状態は、最悪の状態になっていきます。チャレンジがクラスから消えます…。前向きさがなくなります。そして苦しみやつらさをしょいこんでしまうのは、たいていの場合は…弱い立場の人たちです。



 この状態から抜け出すためには、発想の転換が必要です。今あるCゾーン(安心ゾーン)を守るよりかは、さらに広げたほうがもっといごこちがよくなるんじゃないだろうか…ということに気付く事です。これを意識的に行っているのが「PA」です。



❍フォーミングから次の段階にうつるには、「チャレンジ」が必要です。


 金曜日の昼休みに、女子がkuni先生のリクエストに答えて組体操をするという、なんだかよくわからないゲームをしていました。そこへ男子が参加していました。これがチャレンジ。女子は男子をさそうのがチャレンジ。それを受け入れてそこへ飛び込む男子もチャレンジ。そうするとそこに新しいCゾーン(安心ゾーン)が生まれている。男子と女子でなんだか知らないけどワ―ワ―やるのも楽しいじゃん!ってことに気付く。



❍フォーミングから次の段階にうつるには、「その人の選択が大切にされる」ことが必要です。


 休み時間の遊びには、全員が参加したわけではありません。さそいをことわった人がいます。ただ見ていただけの人がいます。楽しげに見ていた人もいれば、関係ないわ!って思ってた人もいます。あの時のさそい方は強制的ではありませんでした。さそわれたほうが強制的にギャーギャー言いながら参加していましたが、さそったほうはそうでもありませんでした。見ていた人にも、「何でやんないんだよ」的なことは全然ありませんでした。これ、PAの言葉で、「チャレンジ・バイ・チョイス」って言います。その人の選択は最大限に尊重され、だれからも強制されることはない」ということです。



❍フォーミングから次の段階にうつるには、「失敗してもせめられない」ことが必要です。


 あのゲームをやっているときに、だれからも「否定的な言葉」は出ていませんでした。だからよくわからない人もチャレンジできたし、楽しめたのだと思います。失敗したっていいじゃん!大丈夫!!というふんいきが、とても大事になります。



 さて、このような準備段階ができると、いよいよ「嵐」がやってきます。


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かっぱの山のぼりNO‘15


 対立が力に③ 



 フォーミングの段階のことを、うまくまとめた文があるのでそれを紹介します。先生の友だちのAKIRAという人が書いた文章を子供用にかんたんにしてみました。それを読みながら、「あー、あるある…」とか、「あー、自分といっしょだぁ」とか「自分はちがうなぁ」とか、自分のことやクラスのことと比べてみてください。



【フォーミング期の特ちょう】



★チームが結成されたばかり。おたがいのことをよく知らない。何をするかもよくわかっていない。


□メンバーのことを十分に理解できていない。
 ・・・メンバーの性格や特ちょう(特長)、強みや弱みなどを十分につかんでいない。おたがいによくわかっていないので何をどこまで話していいのかわからない。よそよそしい。


□メンバーへたよってしまうことが多い。「だれかがどうにかするだろう」
 ・・・自分で進んでやろうという意識があまりなく、だれかがどうにかするはずだ、という期待を持っている。自分が行動の中心になることをさけたがる。


□エネルギーはメンバー個人の内側へ向かう。
 ・・・まわりの環境(かんきょう)に慣(な)れていないので、その場所にとどまりながら自分のことだけを考えている。他者に対する気くばりは意識しているもののえんりょしてしまう。


□リーダーは任命されたリーダーであり、メンバーは指示を期待する。
 ・・・学級・学校の話し合いで決まった係や委員会などとして「班長」「グループ長」「リーダー」「キャプテン」は決まっているものの、自発的に発生した役割ではなく、あくまでも「決められた」役割。メンバーはその役割にたよって「リーダーという役割の人間がすべきこと」として意志・行動決定や価値判断をまかせてしまう。


□不安や、きんちょう感が見られる。
 ・・・「この場でこんなことをしたら」「この場でこんなことを言ったら」「もしうまくいかなかったら」「失敗したら」という予測不可能なことに対する不安感が強い。不安がきんちょうを生み、表情はぎこちなく言葉使いはよそよそしい。



どうですか? あてはまるところがありましたか? さて次はようやく「嵐」です。


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かっぱの山のぼりNO‘16


対立が力に④ 



 さて、フォーミングの次はストーミングという時期がやってきます。文字通り「ストーム(嵐(あらし))」のような状態のことを言います。嵐というと、すさまじい対立や、言い争いが行われているような気がするけど、以下の文を読んでみると、それともちょっとちがう感じです。ストーミングの段階のことを、またまた先生の友だちのAKIRAという人がうまくまとめてあるので、子供用にかんたんにしてみました。それを読みながら、「あー、なんとなくそうなりそうかな?」とか、「あー、それってあったじゃん」とか、自分のことやクラスのことと比べてみてください。



【ストーミング期の特ちょう】


★意見のぶつかりあい/個人の主張


□解決に向けての意見、アイディアが表に出てくる。
 ・・・どうやったらうまくいくか、なにをすれば解決できるか、そのために何が必要か。やり方や解決のための技術(ぎじゅつ)や方法論(ほうほうろん)に話題が集中する。アイディアは出るが、みんなで意志決定がされずに、なんだかよくわからない状態のままアイディアが実行されることが多い。


□メンバーに独立(どくりつ)心(しん)のような気持ちが芽(め)ばえる。
 ・・・「だったら〜すればいいんじゃないの?」「そんなのできるわけないじゃん」などの否定的(ひていてき)な言葉のかわりの意見は、「自分だったら〜するんだけどな」という意思表示で表れてくる。


□エネルギーはチーム内部の競争に向けられる。力の順位、役割と機能が表に出てくる。
 ・・・何をするかよりも、だれが言ったか(したか)によってチーム全体の方向性が決まる。学力、体力、発言力、所属しているグループなどの大きさ、役職などでメンバーが順序づけられる。


□影響力(えいきょうりょく)の大きいリーダーが、自然発生的に現れる=強いリーダーシップの発揮(はっき)。
 ・・・いろんな意味で力の強いメンバーの考えが実行に移される。口数の少ないメンバーや自己表現が苦手なメンバーの意志は大事にされない。このリーダーのアイディアで実行したプランが失敗に終わると、心の中で責(せ)めても言葉には出さない。「一生けんめいやったんだからしかたがない」という言葉が口をつく。


□目標はあいまいで、共有されていない。
 ・・・チームとしての理想像は形になっていない。「こういうチームだといいのに」という個人の希望がそれぞれの心の中に、うずまいている状態。




 おもてだって意見のぶつかり合いがなくても、心の中でうずまいているということは、ストーミングなんだね。さて、私たちは今ここにいるかな? どうだろう? パイプラインンのようすを思いだしてみよう。



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かっぱの山のぼりNO‘17


 対立が力に⑤ 



 ストーム(嵐)が来た後、グループはどうなっているんでしょうか? 言いたい事を言い合い、自分がやりたいことをやりだしたら、その集団はとんでもないことになりそうですよね。むちゃくちゃになりそうです。そんなことになるんたったら、フォーミング期のままで、びくびくしながらも、静かに気の合う仲間の中だけですごしていったほうがいいと思う人もいるかもしれません。でもね、人っていう動物はそうならないんですよ。必ず「よくなろう」とする。居心地のいい場所をつくろうとするのです。



【ノーミング期の特ちょう】



★個人の役割とチームの決まりごとがはっきりしてくる。


□メンバーとしてどのように行動すべきか気づく。
 ・・・チームが達成しなければいけない目標に向かって、自分がどのような行動をとらなくちゃいけないか理解しはじめる。求められている役割を発揮(はっき)し、自分のすべきことに力をそそぐ。自分がやらなきゃとか、目立ちたいと思うより、あの人の方がふさわしいとゆずったり、この役割はあの人にまかせたほうがいいという意識が現れはじめる。


□チームのルール(規則(きそく)や約束事(やくそくごと))が、話し合いもしないのにできあがっていく。
 ・・・ルールや規則作りのための話し合いをすることなく、自然と「約束」ができあがる。文章としてはっきりと示されるものもあるが、これらのルールはだまっているうちにできあがることが多い。


□ゴール(目標)や、メンバーの役割と責任(せきにん)のはんいがはっきりする。
 ・・・ゴールの姿(すがた)がはっきりとかたちづくられ、だれが何をどれくらいどうするか、ということがみんながなっとくした形ではっきりとする。


□「ミッション(使命(しめい))」、「ビジョン(こうなりという思いや姿)」、「ルール(規則や約束事)」、「仕組み」がチームをしばりつける。
 ・・・自分から進んで行動しはじめ、「なんのためにやるか」ということがあいまいながらも共有されはじめる。自分たちが作ったルールにのっとって行動することがよしとされる。


□「私たちのやり方」「うちのチームは」という言葉がさかんに出てくる。
 ・・・「私たちのチーム」という自分の居場所(いばしょ)はここなんだという意識がめばえる。自分のチームの名前を自分たちで考えたり、必要以上に他チーム(他クラス)と競争を意識しはじめたり、守りたがろうとする。



 こんな感じがノーミングです。「ケンカするほど仲がいい」という状態になるんですね。本音(ほんね)で語り合えたからこそ、相手のことを考えることができ、自分を分かってもらえるのです。そういうメンバーで構成されたチームは一体感が生まれ、「自分のチーム」という新たなCゾーンが自分の中にできるんですね。



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かっぱの山のぼりNO‘18


 対立が力に⑥ 


 さて、最後の段階です。チームの状態がここまでくればもうこれ以上の状態はありません。次への新しい出会いの場に飛び立っていきましょう。
ここまでくるのには、メンバー自身の努力が必要です。自然にほおっておいたらこうなるというものではありません。自分のCゾーンから飛び出す勇気と、自分の思いを対立をおそれず表明する勇気、自分の思いを引っこめてゆずる勇気…いろんな勇気が必要です。それがチャレンジだと先生は思うのですが、みんなはどう思いますか?



【トランスフォーミング期の特ちょう】



★全員が能力を発揮(はっき)でき、圧倒的(あっとうてき)な成果(せいか)達成(たっせい)を成しとげる。


□問題や課題が解決され、成功(せいこう)体験(たいけん)を共有する。
 ・・・具体的な行動によって問題や課題を解決することで、チームがどのように動いたりはたらいたりすると成果(せいか)をおさめることができるかを、メンバー全員が理解している。小さな成功体験の積(つ)み重(がさ)ねが大きな成功を生み、チームとして成功と失敗のパターンを学習している。


□メンバーは自立(じりつ)心(しん)が芽生(めば)え、チームに対する帰属(きぞく)意識(いしき)(自分の居場所(いばしょ)はここだという意識)が高まる。
 ・・・「誰(だれ)がするか」ではなく「何をするか」が優先(ゆうせん)される。他チームと比べるのではなく、自分たちだけの価値観(かちかん)を自分のチームに持ち、高い帰属(きぞく)意識(いしき)を感じている。
    (例:私たちは○組よりすごい→私たちは○○だからすごい)


□リーダーシップがあるものがリーダーとなり、しかもその場に一番ふさわしい人物がリーダーとなる。場によって何人ものリーダーが現れる。決められたリーダーは形だけになる。
 ・・・「誰がする」よりも「何をする」を大事にしている。役割のゆずり合いや交代が、みんなの前で明らかな状態で次々と行われ、メンバーそれぞれの強みを生かして課題にあたるようになる。


□「目標」や「決まりごと」は、メンバーが目標達成のために必要なものだとわかっている。
 ・・・メンバーの目標とチームの目標が共通している。ルールや(5の1だったら5つの約束とかこれから作る目標のビーイングとか)や仕組みは、自分のチームの目標達成を助けるものとしてあつかわれているということがみんなわかっている。


□エネルギーは共通のゴールに向かって外に向けられる。
 ・・・個人の自己中心的な行動や、自分はこうしたいという欲求(よっきゅう)も、チームとしての共通の目標を達成するために活かされている。


□自分たちをもう一人の自分が見ているようにして見た行動や言葉を一般化している。(例:おれらのチームはすごい→チームとしてすごいのは○○があるからだ。そういうチームはすごい)


□信頼(しんらい)関係(かんけい)ができている。
 ・・・だまっていても、「あ・うん」の呼吸(こきゅう)ですべてのことが進んでいく。そういう状態です。



私たちはいまどこにいるのだろう?
自分はどこまできているのだろう?
私たちはどこを目標にする??


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長文読了、おつかれさまでした。



この文を読んで考え考えした結果、問題は解決しました。
学級目標は明らかにこの発達段階を意識して、
今の自分たちをリサーチし、
どこまでいくかを考えた結果になりました。



子供たちには難しい言葉かもしれませんが、
共通言語(共通理解)としてあえてこの言葉たちを使います。
子供だからと侮らず、一人の人間として、
同じチームのメンバーとして(先生も)。