ぼのちゃん

ぼのちゃん
          いがらし みきお


ボクはまだ生まれたばかりで
まだなにもできなかったんだよ



おぼえてるよ
生まれた日のことを
生まれたらまぶしかった
まぶしくてまぶしくて
わんわん泣いてしまったんだ
わんわん
わんわん



おぼえてるよ
はじめてふれられた時を
それは手じゃなかった
ホッペタだった
あとでわかったんだ
おとうさんのホッペタだった



おぼえてるよ
はじめて見たものを
それは空だった
だってそうだよ
誰だって一番最初に見るのは空だよ
空はなんていうか
とってもすごかった



おぼえてるよ
はじめてかいだにおいを
それはいいにおいでもなく
悪いにおいでもなく
とてもふしぎだった
今でもそれがなんだったのか
思い出せないけれど



おぼえてるよ
なにかをはじめて好きになった時を
ボクが好きになったのは
ボクの体がボクの思ったように動くこと
今でも好きだよ
大好きだよ



ぼのちゃん

ぼのちゃん