2校目実習1週間終わった。そして、「共有スペース」について

2校めの実習の1週間が終わりました。
2校めの学校は、なんだか授業をやらせてもらったり、
子どもと一緒に活動させてもらったりする雰囲気がまったくなく、
1週間、ひたすら参観するという日々を過ごしています。(ちょっと退屈)
クラス数も少なく、あらかたのクラスを参観し終わったので、
金曜日はちょっと視点を変えて、教室や先生から離れて、
学校の中の共有スペースに一日張り付いて様子を観察してみました。




私は、今までに6校の学校で教員経験がありますが、
残念なことに、共有スペースのある学校に配属されてことは一度もありません。
すべての学校とも、教室の一歩外は長く続く廊下で、
たむろしておしゃべりすることさえ許されない「歩く」「移動する」空間しかありませんでした。
廊下のコーナーにも、踊り場にも、どこかベンチがあるようなところもなし。
研究発表や、公開授業研究で他の学校に行き、時々共有スペースを見たことがある程度です。
なので、どのような使われた方をしているのかはよく分かっていません。
もしよろしければ、共有スペースを使った経験のある方にこの記事を読んでいただき、
フィードバックをもらえたらなと思います。



日本の共有スペースのことはよくわかりませんが、
イエナプラン校のことは2校だけですが分かったので共有したいと思います。
1校目のレーワルデンのセントパウロスクールには、まずスクールカフェという場所がありました。
ここは、文字通りカフェで、この隣にはキッチンがあり、コーヒーや紅茶などの飲み物を用意できるようになっています。
流しやコンロもあるので、料理もできます。
ここは、保護者も入ることができます。
というか、保護者がここに来ておしゃべりできるようにすることが目的としてつくられたようです。
朝,子どもたちを学校に送った後や、お迎えに来たときなどに利用されています。
先生たちもここでお茶します。
子どもたちはここでランチを食べますが、授業中ここに来て学習している子もいます。
ようするに、保護者、先生、子どもたちが混ざるようになっています。



このおしゃれな空間とは別に、各教室の前には、広いワークスペースがあります。
この学校のつくりは、このワークスペースを中心に、放射状に教室が配置されているのが特徴です。(2階建て)
小学生年齢のクラスはミドルクラスとアッパークラスが4クラスずつあります。
日本だったら、同じ学年同士で同じ階に教室が配置されるのが普通ですが、
この学校は各フロアにミドルクラスとアッパークラスが2クラスずつ配置されています。
これでどういうことが起こるかというと、
イエナプラン校は3学年のマルチエイジのファミリーグループで1クラスになっているので、
共有スペースには、全学年の子どもたちが混ざることになります。
6歳児から12歳児までがワークスペースを共有することになります。
ブロックアワーでも、プロジェクト(ワールドオリエンテーション)でも、
教室の中だけで学習することはほとんどないので、
この共有スペースには、授業時間中にいろんな学年の子どもたちがやってくることになります。
(逆に休み時間には誰もいない。全員外遊びだから。)
全学年がそろっているので、さぞかし学年を超えた学び合いが起きているのか!!
と期待しましたが、残念ながらそのようなことはまったく起こっていませんでした。
ここらへんは風越学園のことをちょっと考えてしまいした。
何か考えないとですね。
このワークスペースには、テーブルが6つくらい、パソコンが8台くらい、あとは、本棚がいくつか、教材もいくつか。
2階のワークスペースはでかい机がひとつだけと、本棚がいくつかです。



この教室の前のワークスペースとスクールカフェ・キッチンをつなぐところにも共有スペースがあり、
ここはただテーブルが6個くらいあるだけです。
ここでも子どもたちは自由に学習をしています。
ここはさらに、催しの時に、隣のジムと合体して、ステージ部分となり、催しの会場になります。
キッチンの前にも大きなテーブルがあり、ここでは調理をしていました。



ここからちょっと余談
この調理の実習はおもしろくて、幼児クラスからアッパークラスまでの縦割りのグループで行います。
ですから、3歳児〜12歳児までがひとつのグループになります。(1日1グループのみ)
ここに参加しているあいだ(丸々午前中)は教室での学習はやりません。
そして、この調理実習の先生は……保護者です😄
もうなんでも混ぜちゃえ〜って感じです。
この時間に教室で行った学習の補完は?とか、
教員免許がない人が指導するのはいかがなものか…とか、
そういう問題は起きないんでしょうね、たぶん。




話戻って…
このつなぎのワークスペースを中心にして、
スクールカフェ、小学校クラス前ワークスペース、ジム、残りのもう一方は幼児クラス前のワークスペースになります。そんなに開放感はないんですが、つなげてみるとけっこう広いスペースになります。
この空間があることで、教室に閉じこめられることなく、
自由に学習する場所を選択することが可能になります。
でも、これは、「自分の特性や、学習課題によって一番適した場所を自分で選択して学習してもよい」ということが前提としてなければダメですけどね。
「机の四本の足の外に体をはみ出させてはいけない」という学習スタンダードがある教室(東京都内某小学校)の子どもたちとは、先生の学習観も、子どもの学習観も違ってきますよね。



幼児クラスとミドルクラスは、自分がどこで学習するかを、
ボードに自分のネームプレートをぶら下げて選択していました。(高学年は何もない)
幼児の段階から自己選択・自己決定を行います。
当然自分で選ぶのですから、自分のことも知らなければいけないし、
選んだことで責任も生まれます。
「教室の外に行ったらちゃんと学習しないんじゃないか」→「だから先生の目の見えるところで」ではなく、
「教室の外を選ぶのね、では自分の責任でしっかりやってらっしゃい」というスタンスの違い。
共有スペースがあるということは、教師の教育観やあり方も問われるわけです。



2校目の学校は、この共有スペースが校舎の真ん中にどーんとあって、
学校のコアになっています。
カフェでもあり、サロンでもあり、ホールでもあり、リビングルームでもあり、ワークスペースでもあります。
すべての機能が揃っています。
というか、その時々の要請に対して、フレキシブルに形態を変えることができる、と思ったほうがいいです。
天井が高く、ロフトのような中2階部分は、ライブラリになっています。
テーブルが10数個、ソファーが4列、キッチン、カフェコーナー。
これらがゆったりとしたスペースで広がっています。
セントパウロスクールもそうですが、こういうスペースって、
どこもインテリアや装飾がステキで、必ず花がるんですよね。
でも、はじにはなぜが木工机と工作道具にガラクタ。笑
ここでトントンギコギコしています。
(このあいだは高学年児童が廃棄されたパソコンをガンガンに分解(ぶっこわ)していた)
金曜日の午後はここで催しも行われます。



朝、子どもたちを送った後にたくさんの保護者がここでお茶しています。
でも保護者は9時まで。
でも、この9時までの間はとてもステキなゆるやかな時間です。
各クラス、サークル対話は9時からなので、この時間まではほとんどのクラスは個別学習の時間になっています。
このスペースにも子どもたちはやってくるわけで、コーヒー飲んでる大人に混じって、子どもたちが学習している姿が見られます。
また、あるクラスでは、親子読書の時間にしていて、綾子で本を読んでいる姿はとてもあたたかくほっこりする風景でした。
この時間は、親も子どもも思い思いに過ごしている感じです。



9時になると保護者は退出します。
というか、厳密にそう決まっているわけではなく、
その他の時間でもここにやって来ておしゃべりする親もいます。
私が観察していた金曜日は、午後から催しがありましたので、
その始まる前から三々五々と保護者がやってきてお茶しておしゃべりしていました。
開門◯時で、行列つくって、開門と同時にダッシュしてカメラ席を確保!みたいな感じにはなりません。



さて、9時過ぎて、授業が始まってからの共有スペースの人の流れです。
この学校は1校目の学校より、このスペースを利用している子どもたちは少ないようでした。
午後2時15分から催しが始まりましたので、
そこまでのこのスペースの利用者数は、延べ73名でした。
「延べ」と書いたのは、けっこう複数回利用者が多いのです。
ですから、真の利用者数は、40名程でしょうか。
この複数回利用者の特徴は、ほとんどがグループということです。
連れ立ってこのスペースにやってくるのです。
そして、多くは、あまり学習してません。笑
でも、おもしろいことに、近づいて何をしてるかなぁ的にのぞいていると、
あれこれそれどれと説明をしてくれます。
やることはちゃんと分かっているのです。
でも、ちゃんとはできません。笑
ただし、あるタイミングで、急にやり始めるときがあります。
これも特徴的なことです。
オープンなスペースなので、際立って別の遊びをしたり、
大騒ぎをしたりということはまったくありません。
彼ら自身の時間と場の中で、周りに悪影響を及ぼすことなく、
彼ら自身のリズムで学習をしているという感じです。
先生は時々やってきます。(他クラスの先生も声をかけていく)
向こうから来るとき、明らかに遊んでいるのが見えていると思うのですが、
ことさら怒ることもなく、様子を聞いて、進み具合を確認して去っていきます。
子どもたちは先生に進捗状況をしっかりと説明し、ちゃんとやってます感をアピールします。
ここらへんの弁はとてもたつ子が多いです。さすがオランダ。笑
でも、先生が去ると、おふざけが状態に戻ります。
ようするに、自分のペースで、自分のリズムの中で学習するという感じです。
ただ、子どもたち同士の学び合いや、さらにはそれが異年齢で盛んに行われているのではないかと期待していたところもあったのですが、そのようなことはほとんど起こっていませんでした。
ちょっと残念。



真面目にやるグループや個人もいます。
集中するにはやはりここはもってこいの場所です。
この真面目な子どもたちの特徴は、
教科学習(テキストを使った学び)を真面目にしているのは個人で、
グループで真面目にやっているのは、何かの企画を立てる相談をしていたり、
プロジェクト関係の学習をしている子たちです。




教科学習以外に、ここに訪れたのは、
調理実習をやっているミドルクラスの子たち数人と保護者。
トントンギコギコやりにきたミドルクラスの子どもたち。
催しの司会練習に数回来た男の子2人組。
催しの準備に来たアッパークラスの子たち。
催しの準備に来た振りをして遊んでいるアッパークラスの子たち。
催し後にクラスで打ち上げるためのお茶とクッキーを用意している女の子たち。
レゴを使ってコマ送りの動画を撮影している子たち。
そして、多動の子2人。
この多動の子のうちの一人は、先生と一緒にここに来て、
いろいろ説得されるも自分のやりたいことがあるらしく、
あちこち動き回って教室に戻っていきました。2回ほど。
もう一人の子は何回もここを訪れていました。
ある時、手にはスペリングのテキストが!!
そして、自分のお気に入りの場所(何かの台の上)でカキカキしています。
でもすぐに注意が他に移り、遊び出す。
でもまたあるタイミングですっとテキストに戻る。
でもまた遊ぶ。
こんなことを場所と時間を変えながらくるくると繰り返していました。
この子の担任の先生は、1回も見に来ませんでした。



2時15分に催しが始まると、この場所は大きな会場になります。
かなりの数の保護者が見に来ていました。
全校児童、全職員、多数の保護者、全員でセレブレーションです。
出し物は全部で5つ。
最高だったのは、幼児クラスの子を含めたダンスユニットで、
これはたぶん高学年の子が企画したんだと思います。
混ざってます😄
終了後、子どもたちが教室に入ると、保護者が一斉に会場を元通りにします。
すごい手際です。
その後も、ほとんどの保護者は残っていて、おしゃべりしたり、お茶したり。
そして、子どもの下校時間になると一緒に帰っていきました。
金曜日の共有スペースはこんな感じの一日でした。



さて、以上、2校の共有スペースの情報をまとめてみました。
このスペースがあることで可能になるのは、
① 児童、生徒、保護者が混ざることができる。
② 異年齢児童が混ざることができる。
③ 保護者が学校に関わりやすくなる。
④ 学習する場所を子ども自身が選択できる幅が広がる。
⑤ 学習内容、プロジェクト内容に広がりが生まれる。
⑥ リビングルームとしてのゆるやかさ、ゆったり感が学校の中に生まれる。
⑦ 緊急避難的に教室からエスケープすることができる。
⑧ いろんな人に見守られる。
⑨ 全校児童が集まれる催しがアットホームな雰囲気で開催できる。
⑩ 教師の教育観、学習観を変えることができる。
といったところでしょうか。
イエナプラン校で上記のことがすべてうまくいっているということはなく、
いまだ発展途上という感じです。
でも、可能性は無限に広がりますね。



懸案の、共有スペースでの学年、クラスを超えた異年齢での学び合いは、
中学生が混ざることでかなり解消できるのではないかと感じました。
今の学校には、なんと高校生のインターン生がいます。
また、IT関連のサポートをする高校生も2人学校に来ます。
その子たちと子どもたちの関わりを見ていると、なかなかいいんですよねぇ。。。
中学生が混ざることで、可能性が広がると思いました。
2学年、3学年のファミリーグループではなく、
全学年をぶっ通した大きなファミリーグループがあれば、
ずいぶん交流が生まれるような気がしました。
よくあるたてわり班活動とかとは違って、
イベントにならず、ふだんの学習や生活場面でゆるやかにつながっていけたらいいなと思いました。



あと、物理的にそういう場があっても、
ただほっといといたら学び合いが始まる、ってことはないと思うんです。
意図的なフレームワークとその中のプログラムデザインも必要になると思います。
いろいろ考えられそうで楽しみです。
何でだか知らないけど、これに関係ありそうなことをこのタイミングで、ゴリがブログに書いていたのでご参照ください。ゴリ、ぼくのためにありがとう。
http://iwasen.hatenablog.com/entry/2017/11/05/200732




保護者や、地域の方々の参画も期待したいです。
学校の中の共有スペースが、保護者や地域に開かれていることは非常に重要で、
子どもたちの学びの広がりと深まりに大きく関わってくる気がします。
当たり前のように学校の中にいろんな大人、いろんな職業の人がいる、
そんな情景を思い浮かべるとなんだか楽しくなってきます。
「開かれた学校」というと、情報公開であったり、保護者による学校評価であったり、
様々な学校の様子をどのように親に伝えるか、みたいなことになりがちですが、
もっと直接的に、ぐっちゃんぐっちゃんに学校の中で混ぜ合わせればいいのになと思います。
前任校の校内研究で、「参観ではなく参画を」をと呼びかけ、
授業の中に保護者や地域の方々にガンガンに入ってもらいました。
これも当然、イベントではなく、普通の授業にです。
この、「イベントじゃなくふだんの授業、生活」っていうのはとっても重要だと思います。
イベントにした途端、ぜーんぶ他人事になっちゃいますから。
「どうすればいいんですか?」とか「前回はどうやってたんですか?」とか。
PTA行事って、たいていそんな感じになってませんか?



これらのことを可能にするのは、⑩の教師の教育観、学習観ということになります。
共有スペースが子どもたちの学びの場として様々な活用のされ方をするには、
「教室の中での学び」からの脱却が必要になってきます。
閉ざされた教室の箱の中で、同一学年、同一メンバーで、一年間同じ先生から学ぶ、このフレームが外された時、子どもたちの学びは大きく前に進む気がします。
子どもに学習権があり、学びのコントローラー(@ゴリ)は子ども自身の手に。
● 個別に自己主導できる学習がまず前提としてあること。
● 自分の学びのスタイルを知っていて、何を学ぶか、何で学ぶか、どこで学ぶか、誰と学ぶか(または一人でやるか)、自分で選択・決定できること。
● やってみたいと思う学習方法を考えて、それが実際にできる場や、サポートが受けられること。
ここらあたりが大切になってくるかと思います。
これが子どもたちの学習に当たり前のように根付いていれば、
共有スペースがあることで、さらに力を伸ばすことができると思います。



どんな共有スペースにしたいですか?
そこに何があればいいですか?
そこに誰がいればいいですか?
そこで何がしたいですか?
そんなことを自分への問いにして考えていきたいと思います。