10月学校公開参観記③

ちょっと間があきましたが、のんびり続けたいと思います。
今回は一気にお二方いきます。
イエナプランについてお詳しいお二方です。
見方や見えているものがとても似ているのでとても参考になります。
一人目は、原田友美さんです。


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今日は、KAIさんの公開授業を参観させていただきました!KAIさん、ありがとうございました!
朝学習から2時間目の終わりまでという短い時間でしたが、安心感があって、子どもが自分の学びを自分で進めている様子がとても印象的でした。
たくさんの気づきがあり、かなり長文になってしまいました!



朝学習の時間に到着すると、2年生の3クラスとも、とても静かに読書をしていました。
他の2クラスはチャイムと同時に読書を終えていましたが、KAIさんの学級はなんとなく読書が続き、そしてなんとなくサークルに子どもたちが集まって来ました。
本当にゆっくりと、自然な感じで。
ほとんどの子がサークルに集まる中、2人の子は読書に夢中で、完全に物語の中に入り込んでいる様子。
そこで初めて子どもたちに声がかけられました。
なんとも自然。
家でくつろいでいるような雰囲気でした。



サークルタイムには、今日の予定を伝えたり、今日頑張りたいこと、楽しみなことなどをペアで話したり全体で話したり、読み聞かせをしたり。
ゆっくり今日の学習が始まっていくのだなぁと思っていたら、これ、去年の夏に見たオランダのイエナプラン校の感じと同じだ!と気づいたのです。
きっと近い雰囲気だろうなぁと期待はしていましたが、公立学校の教室で、こんなゆっくりした、自然な雰囲気が実現できているのを目の当たりにして、「あぁ、できるんだ。」と一人で納得。
そこでやっぱり思ってしまうのは、来年全く違うタイプの担任の先生になったら、子どもたちも残念だろうな、ということ。
これはやはり公立校ではある程度仕方のないこと。栄小では、校内研究で全校共有ができていそうですが、学校全体でビジョンを共有することは本当に大事なことですね。



1時間目の「作家の時間」がゆっくりと始まり、自分の席で書く子、ベンチで書く子、友だちにアドバイスをしている子、ちょっとぼーっとしている子など、自由な雰囲気の中だけどみんながしっかり活動していて、友だちと話をしていても今やっていることに関することについて話をしている。
集中して書いている子はただひたすら集中して、自分の下書きのノートを見ながら書いている。
ちょっとぼーっとしている子も、自分のペースで、その時が来れば書く、書く!
KAIさんは、全体に向かって話すことはほとんどなく、個別に見てまわる。
自由だなぁ。
こんなクラスだったら、書くことが嫌いになるなんてないのかもな。


こんなに自由で、ベンチで寝そべったり、床に座ったりしながら活動している様子を「素敵だなぁ、学んでるなぁ」と思いながら、でも保護者の方はどんなふうに見ているのだろう、とちょっとはらはらしながら見ていると、お父さんらしき方が、「ちゃんとやりなさい!」といった感じである女の子に注意をしていた。
でも1時間目の終わりに、その子は自慢げにその子のお父さんお母さんらしき方に自分が書いたものを見せ、一生懸命説明していた。それを聞いているお二人の顔は、とても嬉しそうでした。
1時間目終了のチャイムが鳴った時、何人かの子が「あーぁ」(おわっちゃった)と言ったのを聞いて、本当に書くことを楽しんでいることが伝わってきました。
5分休みも関係なしに書き続けている子もいました。
どういう段階を経て、ここまでになるのかなぁ。とても気になるところです。



2時間目は「読書家の時間」でしたが、不審者対応訓練のために読み聞かせのみ。
しかし、KAIさんの選んだ絵本が、また素敵な絵本!ちょっとうるっときます。
子どもたちに感じたことを問いかけながら、子どもたちも楽しんで聞いていました。
絵本の中の隠れた秘密を紹介すると、見たくて仕方ない子どもたちが「貸して、貸して!」とKAIさんに群がります。
微笑ましい。
子どもたちととても良い関係を育まれていらっしゃるのが、短い時間でしたが、とても伝わってきました。


KAIさんが「今日はうまくいかない感満載」と書かれていて、「えー!?」と思っておりますので、今度その辺りをお聞かせいただきたいなー。
まだまだ書きたかったこともありましたが、ちょっと長くなってしまったのでこの辺で。
KAIさん、本当にありがとうございました!

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2人目は坂内志保さんです。

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☆朝
朝、2年3組をのぞくと、子どもたちはしーんとした雰囲気の中、本を読んでいました。
廊下から教室をのぞく大人が何人もいましたが、気にせず本に没頭する子どもたち。
途中で本棚に本を取りに行く男の子がいました。その男の子は本棚の前にいる別の子の後ろから手を伸ばして本を取ります。その時、本棚の前にいる子の頭に腕がぶつかってしまったようなのですが、本棚の前にいた子も、本を取った男の子も何事もなかったかのようにしゃべらず本に集中していました。
なんてことはない風景ですが、本を読む場の雰囲気が大事にされているなぁと感じました。



サークルタイム。
KAIさんが何も言わないのに、子どもたちはパラパラとサークルに集まり始めました。
何人か本に没頭していて気がつかない子がいて、子どもたちが声を出さずに肩を叩いて知らせてあげていたのが印象的でした。
サークルタイムでは近くの人と「今日がんばりたいこと」や「好きなゲーム」を話していましたが、話す声の小ささ、全員が話しているのに騒がしくならない丁度良さに、とても慣れているなぁと感じました。
KAIさんが全員に向けて話す声が小さいことも印象的でした。KAIさんが「ちょっと話をします」と話しはじめる時、何人かの子どもたちは友達と話すのをやめません。
その状態でKAIさんが話しはじめること、友達と話している子どもたちの声も邪魔にはなっていないこと、他の子どもたちもそれを気にしていないこと、友達同士で話している子にもKAIさんの声は耳に入っている様子なこと、どれもとても自然でした。
原田友美さんがフィードバックでおしゃっていたように、オランダで見たイエナプラン校のクラスの雰囲気にとても近いものがあるなと感じました。というのも、各々が自分のすべきこと、したいことを把握していて、それを侵害されない限り他の人の行動に口を出したり咎めたりしない、自立した様子が似ていると思います。



☆一時間目:作家の時間
ミニレッスン後、机にむかってもくもくと書く子、共同で書くための話し合いをする子、書くのに飽きてふざける子、など様々な子どもがいました。
教室の雰囲気は少しザワザワしていましたが、一定のラインは越えないな、と感じました。
KAIさんは時々「しー」と諌める他は、子どもとのカンファランス。そのカンファランス、話の中身を聞くことは出来なかったのですが、まるで大人同士の相談、といった雰囲気で格好良かったです。
共有の時間。学校公開だからか、廊下から聞こえる声が少しうるさかったのですが、友達の作品を聴く子どもたちが、ものすごい集中力で、かなり場が締まっているのを感じました。
一人の男の子は共有の時間がはじまっても書くことに熱中していましたが、作品を読む声が聞こえはじめると、するっと輪の中に入っていきました。



☆2時間目:読書家の時間・不審者対応訓練
KAIさんが「サークルに集合」と言うと、すぐに集まる子もいる一方で作家に集中してサークルに来ない子も。
KAIさんはこの日はじめて「〇〇、集合」と個人によびかけ。呼ばれた子が何事もなかったかのようにするりとサークルに入ったのもとても自然でした。
この時不審者対応について話をしていましたが、「聞いて、〇〇が質問しているよ」「ふざけないで訓練だから」など、場を冷ます言葉がこの場では何回かありました。


その後読み聞かせ。
読み聞かせの時の子どもたちの「のめり込み感」はすごいなぁと思いました。
KAIさんの語り口からも、その本がいかに面白いかが伝わってきました。
その後時間が余ったので、各々自分の机に戻って作家や読書家をする子どもたち。
サークルは全員で共有する場、個々の机は自分の作業をする場、という住み分けが子どもたちの体に染み込んでいるのを感じました。



☆4時間目:算数
日付とページ数をホワイトボードに書いてするりと授業が開始。
教科書やノートを授業前から用意してすでに教科書をじっくり見ている子もいれば、KAIさんが算数の話を始めてから授業の用意をはじめる子も。
KAIさんが全員にむかって話している最中も班の子ども同士が自由に話していたり、KAIさんの「直角三角形って何?」などの質問に対する返答が少なかったりと、あまり一斉型の授業に慣れていないのだろうな、と感じました。
一転して、グループごとの勉強にはとても慣れているなぁと感じました。
「これ、こういうこと?」「ここに書いてあるよ」「教えて」などの会話が自然に為されていて、みんなで問題を考え悩むことを楽しんでいる印象を受けました。
ですがKAIさんは「まだちょっと見合うのが足りないよ」「もう一度、班の中のみんなで見合ってごらん」と何度も声掛けをしていて、子ども間のコミュニケーションを促進しようとしているのかなぁと思いました。



その他、気になった点として、KAIさんは子ども同士の諍いに口を挟まないのだなぁと思いました。
わたしがこの日見た中では、絵本の取り合いから「〇〇がページを破った!」「破ってない」と言い合う姿と、体育館に向かう時、教室で並ぶ際に「〇〇が押した」「押してない」と言い合う姿が見られましたが、そのどちらにもKAIさんは注意や子どもを裁く言葉を発していませんでした。
子どもたちのほうも、多少もめた後は大きなケンカに発展せず過ごしていました。



まとまりのない長文になってしまいました。
まだ咀嚼しきれていないこともありますが、生のクラスを見せていただきとても勉強になりました。
KAIさん、ありがとうございました。

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私自身は、イエナプラン校を見たことはありません。
本も数冊読んだレベルです。
「20の原則」もほとんど覚えていません。
実践も「っぽい」とか「もどき」レベルです。
高学年で、3年間、ワールドオリエンテーションと称して探究型の学習の時間を行っていましたが、あるとき、本家本元のワールドオリエンテーションの動画を見て、そのあまりの違いっぷりに愕然としてしまいました(笑)
ブッロクアワーも、今から7年前に3週間だけやったことがあります。これは、記念すべきイエナプラン教育協会の第1回の会でナオトと2人で発表しました。マルチエイジと称して2学年で学び合っている授業も。今考えると、これまたはなはだ勘違いの激しい授業でして、今考えると非常におそまつであり、イエナプランを冒涜しているような授業でした。
ごめんなさい。


と、懺悔したところで、今のうちのクラスの状態ですが、イエナプランに詳しいお二方にイエナプラン校の雰囲気にちょっと似ていると言われて嬉しいです。
けど、イエナプランを意識しているわけではありませんし、導入しようと画策しているわけでもありません。
「ゆったりとして自然な感じ」というのが、参観されたいろんな方々に共通する感想のようです。
それが、たぶん、イエナプラン校の雰囲気なんでしょうね。
一度、生イエナを見てみたいです。



たぶん、本格的にイエナプランを日本の公立小学校に導入するのは、かなりハードルが高いことでしょう。私立小学校でもかなり難しいと思います。でも、実現できたらいいですね。
自分がつくるなら、でも、ちょっと本当のイエナプランにはならないような気がします。やっぱり自分の軸は、アドベンチャー教育であり、体験学習法なので、そこから外れるわけにはいきません。
「Adventure In The Classroom」を突き詰めよう。



いくつかの質問・疑問に回答します。
「先生が来年度変わったら子どもたちはどうなるか」
どうなるでしょう…。
こんな感じのクラスや授業をやりはじめてからずっと高学年だったので、(ようするに全員卒業しちゃう)その後がよく分からない。風の噂で聞くのみ(笑)
次は3年生で、クラス替え、担任替えになるので、子どもたちはたぶん、しっかりとセパレートできると思います。その環境で、ベストのものを子どもたち自身でつくっていこうとするなら成功、周りのせいにしているなら失敗です。「甲斐崎先生がよかった」と言われたら敗北です。



「どういう段階を経て、書き続けられる子どもが育ったのか」
書きたいことを書きたいように書ける時間を保証すること、書くモデルがいること、多様な読者がいること、自己選択・自己決定があること、協同して書けること、あたりでしょうか。
そんなに難しくないと思います。



「訓練中の冷ます言葉」
冷ませます。冷めないと冷静な判断はできませんから。冷静になる訓練です。避難訓練は真剣にやってもらいたい。悲しいことになるのが嫌ですから。



「見合いが足りない」
低学年の子どもたちっておもしろい。不思議なほど、こちらがびっくりするほど周りが見えていない。「えっ!?気付いてない!」ってこととっても多くて、笑ってしまうことが多い。なので、よく声はかけます。けど、怒りません(笑)


「子どものもめ事に口を挟まない」
あまり挟まないです。状況の整理は時々やりますが、その後は考えてもらいます。そして、ご指摘の場面は、とるに足らないことだから取り合わなかっただけです。
意見が対立している時には、時間と場所をとって授業中でも話し合ってもらいます。基本、一斉授業じゃないので、大丈夫(笑) 明らかに、ただの我がままで、善悪がはっきりしていて、理不尽がまかり通っているときには、「あなたが悪い」といいます。一昨日もありました。



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さてさて、長々とお読みいただいてありがとうございます。
まだまだ参観記は続きますのでお楽しみに〜😄