本が出版されました③

いよいよ3冊目です。
今年度は3冊の本にかかわってきたことになります。
ブッククラブの本は寄稿というカタチ。
PAのクラスづくりの本は共著というカタチ。
そして最後のこの本は、自分自身初の単著というカタチになります。



クラス全員がひとつになる学級ゲーム&アクティビティ100 (ナツメ社教育書ブックス)

クラス全員がひとつになる学級ゲーム&アクティビティ100 (ナツメ社教育書ブックス)



この本、プロジェクトアドベンチャー(PA)の本です。
プロジェクトアドベンチャーについてはここを。↓↓↓

http://www.pajapan.com/



PAをよく知っている人から見れば、
この表紙や、この本の題名からは「・・・・」
ってなるはずです。
でもこれはれっきとしたPAの本なのです。
PAJ「協力」なのです。



本の題名って、著者が決められないんですね。
初めて知りました。
原稿が終わりの頃に聞かされました。
「とっても楽しいPAの本」もそうでした。
ブッククラブの本は新さんが一生懸命考えてたんだけどなぁ。
影響力の違いか。。。



本の内容はというと、
簡単に言うと、PAのアクティビティ集です。
全部で100個。
なぜ100個なのかは知らない。



アクティビティ集ですが、ただ単に100個を並べたわけではありません。
何人かが分担して書いた本ではないので一貫性があります。
100個の順番にも意味があるし、
カテゴリーにも意味があります。
このアクティビティをやったあとにやってくださいとか、
こういう状態じゃなければやらないでくださいとか、
けっこうめんどくさくて使いづらいものになっております(笑)
けどね、それは当然なんです。
一個のアクティビティで、子ども達が変わるわけはないのです。
「気づき」なんてそう簡単に訪れやしない。
何回も何回も体験を積み重ね、
失敗も成功も対立も葛藤もいっしょくたにしてみんなで数々体験した後に、
「あっ!そういことか!」ってわかる。
上條さんはそれを、
「気づきは体験のナイーブな積み重ねの上にある」
と言ってた。
だからだ、アクティビティはどれでもいいってわけじゃない。
しっかりと子どもの状態をアセスメントする必要があるし、
それに合わせてプログラムデザインしなきゃいけない。
この紙面では十分に伝えられなかったけど…。
ファシリテートってこの本の中には出てきません。
ほんとは全部ファシリテートです。
でも、言葉だけあっても伝わらないし、
それについて書く紙面もなかったのであえて使いませんでした。
すみません。




あとがきにも書きましたが、
100個のアクティビティを書くにあたって決めたことが一つあります。
それは、「PAについて書かれた本を一切見ないで書く」ということでした。
PAについて書かれた本は、理論的な本からアクティビティ集まで、
数々出版されています。
私自身も、『みんなのPA系ゲーム243』には文章を書いています。
どれもとってもいい本です。



ですが、



それを一切見ないで書く。
自分の中に今あるものだけで勝負しようと思いました。
自分の中の「今、ここ」だけで書こうと思いました。



理由は、
①自分がどんだけのものなのか試したかった。
②実践したきたことだけにこだわりたかった。
③余計なことを考えて時間がかかってしまうから。
です。



ですから、原稿は、実践してきたことをそのまま文章にしていきました。
目の前に子ども達がいて、自分が話しているように、
子ども達はそれに答えているように…。
子ども達同志が喧々諤々言っているのを、
いつも黙って聞いている私がそこにいるように…。



実は、本の中の文章は、かなり編集さんの手が入っています。
私の拙い文章を、世の中の人々に読みやすいようにとても苦労して書いてくれました。
でも、勢いや、臨場感は薄れてしまいました。
残念だけど、それは世に出回ることを考えればいたしかたありません。
もともとはこんな感じの文章です。


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アクティビティ84 「魔法のじゅうたん」

ねらいと効果
一見不可能に思える課題を、体力・知力総動員で解決していきます。一体感がグンと高まるアクティビティです。



ねらいと効果の本文
自分たちが乗っている布を、全員が乗ったままひっくり返すというアクティビティです。一見不可能に思えますが、いくつかの解決方法があります。布から落ちるとアウトなので、自然とお互いに支え合いながらの活動になり、知らず知らずのうちに身体接触度が高くなります。ひっくり返すにはちょっと先入観を捨てて、柔軟に考えることが必要です。コミュニケーションのとりづらい密着した中での課題達成へのプロセスをふり返ります。



ステップ1
布を広げ、その上に乗って説明を聞きます。

「さて、みなさん、本日は魔法のじゅうたん航空会社をご利用いただき誠にありがとうございます。当機はこれより世界1周の空の旅へと出発します。ちょっと狭いですけどがまんしてくださいね。では出発しま〜す!」
『いきなりなんだ、なんだ?』



ステップ2
課題とルールの説明を聞きます。

「ただ今ヒマラヤ上空を通過しております。と。あれ? ちょっとエンジンが…。止まっちゃった…。あれー? ちょっとみなさんすみませんね。・・・・調べてみたんですがどうもエンジントラブルのようです。よいしょっと」
『先生何してんの?』
「いや、脱出用のパラシュートがあいにく一つしかないようなので、私がこれ使いますね」
『えーっ!?』
「あ、いや、ご心配なく。実はこのじゅうたんには予備エンジンがついていてそれに切り替えればまた飛べるようになりますから。ただですね、その予備エンジンに切り替えるスイッチがですね、さっきから押してるんですがまったく反応しないんですよねぇ(笑)」
『・・・・』
「あ、でも安心してくださいね。機体の裏にあるエンジンルームに行けば直接手動で切り替えられますから。ここは高度1万メートルなんで落ちたら死んじゃいます。なので、全員がじゅうたんに乗ったままで、うまくこのじゅうたんをひっくり返してください。あ、あと15分でこのじゅうたん地上に落っこちちゃうみたいですね。それまでになんとかしてひっくり返してくださいね。何か質問ありますか? じゃあ、私はこれで。(ヒョイ!)」
『あー、ずるーい! 降りちゃったよ…。』




アレンジ
さらに、「上空に戻るためには機体を元に戻さないと出力が出ない」「あと5分でエベレストに激突する」という設定にすると、今までよりもさらに課題へのコミットメントが全員に要求され、チームワークが高まります。でも一度成功していることなので、解決方法もわかっており、さらにみんなの気持ちは前向きになっているので、すごい集中力で課題達成していくはずです。



ふり返りポイント
「課題達成へ向けてチームを前に進めたのはどんな行動や言葉だった?」
「お互いに支え合うことができた?」
「全員が集中して課題にかかわるためには何が必要なんだろう?」


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アクティビティ79 「パイプライン」(ねらいと本文、アレンジのみ)



ねらいと効果
全員の力を合わせないと絶対に達成できないアクティビティです。全員が集中して課題に向き合うためにはどうするかをみんなで考えることができます。



ねらいと効果の本文
ハーフパイプをつないで、玉をゴールのバケツに運ぶというシンプルなアクティビティです。でも、誰一人としてサボれない、一瞬たりとも気の抜けない、最後の数センチでエラーが簡単に起きてしまうというとってもシビアな面があります。全員の積極的な参加が求められるため、課題達成に向けて、一致団結することが必要です。最初に役割分担ができず、臨機応変な判断や行動が要求されます。エラーが頻繁に起こり、それをみんなで乗り越えていく方法を体験的に学びます。シンプルなだけに様々なアレンジができます。クラスの状態をアセスメントして、設定を変えてみましょう。



ステップ1
1チーム10人程度のチームをつくります。ゴールを確認します。

「ここに小さな玉があります。この玉をあそこにあるバケツに運ぶという、たったそれだけのアクティビティです。使う道具はこれ! ジャーン! パイプを半分に切ったもの。これを一人1本持ってもらいます。長さが3種類あるから、チームで相談してね。何をやるかは分かったかな?」



ステップ2
ルールを確認します。

「次はルールです。最初の人はこのフラフープの中に入ってください。ここからパイプにビー玉を入れます」
「ビー玉は、前に転がり続けます。途中で止まったり、後戻りしたりしたら最初からやり直しです」
「当然途中で落っこちちゃってもやり直しです」
「玉にさわれるのは、落っこちた時と最初にパイプに入れるときだけです」
「パイプはくっつけてもかまいません」
「あともう一つ、玉が乗っている時は、足を動かして移動することができません。ボールが乗っていない人は自由に動いていいからね」
「ルールはそれだけです」



ステップ3
時間内に何回チャレンジしてもOK。みんなで協力して課題に取り組みます。

「時間は20分間です。時間内に何回でもチャレンジしていいからね。では、よういスタート!」
『よし、どうしよう…?』
『とりあえずつながってみようよ』
『ぜんぜん足りないよ』
『戻っちゃいけないんだから高いところからやんなきゃね』
『坂にするってこと?』
『そうそう』
『みんな、その案でいい?』
『短いのはどうするの?』
『玉が過ぎたら急いで後ろに回ってつながなきゃいけないんじゃない?』
『そういうことか!』
『何回くらい?』
『うーん、3回? いや4回かも』
『けっこう大変だね』
『ま、とりあえずやってみない? やったらわかることってあるじゃん』
『そうだな、やってみるか』
『おれスタートがいい!』
『おれも!』
『んじゃ、交替交替ね』
『OK、じゃいくよ〜、並んで〜、ちょっと曲がってるよ〜、うんいい感じ。高さこれくらい? あんまり高いと見えないよね…。これくらいか。なんか途中で止まっちゃいそうだけど、ま、いいか、やってみよう! じゃ、いきま〜す! せーの!』
『うわっ!!!!!!!!!』
『めっちゃ速い!!!!!』
『走れ、走れ!!』
『あー、落ちちゃった…』
『ぜんぜん間に合わないよう〜』
『もっとゆっくり転がさなきゃダメなんじゃない?』
『そうだね』
・・・・・・・・・・


よくあるトラブル①
「エラーに対する叱責」
『あー、止まっちゃった!』
『えー?またぁ??』
『ごめん、ごめん、でもそんな言い方しなくてもいいじゃない』
『でもいっつもなべっちのところじゃない?』
『一生懸命やってるのに…』
・・・・・・・・・・・・・



よくあるトラブル②
「集中できない子どもへの叱責」
『これ無理じゃない?』
『なんで?』
『だって、真剣にやってない人がいるもん。けんじとしょうたはおしゃべりばっかしてんじゃん。ぜんぜんやる気ないでしょ?』
『そうそう、失敗してもヘラヘラしてるしさ!』
『真剣にやんなよ!』
『なんでおれたちだけなんだよ。他にもやってないやついるじゃん!』
・・・・・・・・・・・・・・・・



よくあるトラブル③
「強権のリーダーへの不満」
『あのさぁ、たかしさぁ、命令ばっかしないでくれる? あれやれこれやれって、おれたちみんなやらされてるだけじゃん。みんなで決めていこうぜ』
『だって、だれも何にも言わないし、しないじゃん』
『みんな考えてんだよ。人の失敗はすげー厳しく言うくせに、自分が失敗したら笑ってごまかしてるじゃん。すげー、いやなんだけど』
・・・・・・・・・・・・・・・




よくあるトラブル④
「アイディアの多様性を認められない。固執してしまう」
『あのさぁ、これさぁ、そんなに坂にしなくてもいいんじゃないのかなぁ。自分のところでさ、じっくりゆっくり転がせばさ、回りこんで走る時間もできるし。どう?』
『はぁ? なにそれ? 長さ10m以上あるんだぜ。頭の上くらいからじゃないと無理に決まってんじゃん』
『いや、そうじゃなくてさ、高さは自分のところで自由に変えられるんだからさ。最初っからそんなに高くして坂をきつくしなくてもいいんじゃないかなぁ。ちょっとした坂でも玉は転がるよ』
『意味わかんね。もう一回やろうぜ。もっとみんな急いで走ってね〜』
『・・・・・』
・・・・・・・・・・・・・・・




よくあるトラブル⑤
「チャレンジしない」
『これどう? パイプつなげないでさ、パイプに乗っけたままちょっと離れた人に受け渡しするの。これだたったら2回くり返すくらいですむんじゃない?』
『えー、無理無理。難しいし、すぐ後戻りしちゃうよ』
『じゃこれはどうかなぁ。みんな座ってやるの。そしたらそんなに傾斜つかないしさ、落ち着いてできない?』
『すぐ立てないじゃん。無理だよ』
『交替交替に向かい合ってやればどうかな?』
『途中でこんがらがっちゃうよ。どっちだっけ〜とか言って混乱しちゃって、無理だよ』
『おまえなぁ、無理しか言わないじゃん』


ふり返りポイント


トラブル①
「だれか失敗しちゃったとき、どうやってその子にかかわればいいんだろう?」


トラブル②
「集中していない人がいた時に、その人がやる気が出てくる言葉かけやサポートってどんなことだろう?」


トラブル③
「一人の人や一部の人たちだけで仕切っちゃって、みんなでやっている感じが出ていない時って、どうすればいいんだろう?」


トラブル④
「実はとってもいいアイディアがでていたんだ。でも、結局それは採用されなかったんだけど、どうしてこんなことが起こるんだろう? 起こらないためにはどうすればいいと思う?」


トラブル⑤
「時間だけがどんどん過ぎていったように見えたけど、その原因は何? どうすればもっとチャレンジできる?」



・トラブルからふり返る時は、個人攻撃にならないようにします。人ではなく、その行動や言葉に注目します。ようするに、「○○をした○○君が悪い」ではなく、「(○○君がした)○○という行動は悪い」ということです。名前さえも出さないようにするべきですが、熱くなるとつい名前が出てしまうので、こういう言い方をするんだよと最初に伝えておきます。


・原因を追及するのではなく、エラーは起こって当たり前、大事なのはこれをどう乗り越えるかなんだということを伝えます。次へとつながるふり返りにします。「○○をしない」という規制のめあてではなく、「○○をする」という行動目標に変えて一般化・適用します。


・トラブルが起こると先生はどうしてもあわててしまいます。でも、これは一転チャンスなのです。このエラーからの気付きは、確実に次へのステップアップにつながります。落ち着いてふり返りましょう。




アレンジ
シンプルなだけにアレンジし放題です。


①玉を変える
 ・難易度にかなりの差があります。どんどん難しいものにチャレンジしていきましょう。自分達で目標設定して行います。


②玉の数を変える
 ・制限時間内に数個または、数種の玉を入れるように設定します。


③コースを変える
 ・曲線をつける。
 ・見えなくなる場所をつくる。たとえば教室からいったん廊下に出て教室に戻ってくるなど。
 ・スタートとゴールをくっつける。これはいろんなアイディアが出ます。コースの形も自分達で考えることになります。
 ・上り坂をつくる。発想の転換が必要になります。ただし、学校だとスロープはそうないので、階段?と思ってしまいますが、危険なのでやめましょう。熟練してきたら、ちょとした2.3段の段差を入れるくらいでしょう。


④チームは分かれているけど、クラス全体で協力しないとできない形にする。
 ・ゴールをクラスでバケツ1つにする。譲り合ったり、順番を考えたりすることになります。他チームの様子も見れるので、アイディアの共有が起きます。
 ・2チームのコースを交差する形にする。合図をしてスタートを同時にします。相手のスタート地点の後ろには回りこめません。必ずどこかで交差します。


⑤クラス全員で行う
 ・簡単そうに見えますが、話し合いでの合意形成や、コミュニケーションが非常にとりずらい形です。かなりクラスが成熟して、まとまっていないとできません。私は卒業記念として一番最後に行っています。



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元の原稿はこんな感じです。
西多摩PACEの仲間たちが総出演です(笑)



こちらの元原稿は一式10万円で販売しています(笑  うそ)



書いていて、とっても楽しかったんですね。
ストレスフリー!(^^)!
やったこと書くだけ、子どもとの楽しかったこと(しんどいこともあったけど)書くだけだもの。
編集さんがいると、こんなに楽なんだ!っていうのもあったかな。
生き生きとした文章になったなぁって思います。
出版された本は本で、こっちの元原稿はまったく違った「本」になって、私の宝物となりました。




さて、この本を書くにあたっては、一切本を見なかったのですが、
私の頭に思い浮かんだのは、実際の子ども達と、
私自身がPAを体験している時の様子です。
私はPAに出会ってから10数年、子ども達と一緒に楽しんできたと同時に、
自分自身もPAを遊ぶように楽しんで学んできました。
そこには一流のファシリテーターの方々がいて、私の指針となりました。
この本に載っているアクティビティのファシリテートも、
その方々の受け売りのものがたくさんあります。
私自身が考えたのではなく、その方々が考えたインストラクションであったり、
ふり返りのポイントであったりしているものがあります。



難波克己さん、二宮孝さん、田中裕幸さん、篠田真宏さん、中島宏さん、高久啓吾さん、ちょんせいこさん、長尾彰さん。
PA.Inc、PAJのトレーナーの方々。



私が学んできた一流のファシリテーターの方々です。
ありがとうございました。
感謝感謝です。



この本、気付かれた方は「あれ?」って思ったかもしれません。
ここにあるのは、PAとしてではなく、別の場所で見たぞ!ってものがあったでしょう。
ここには、「仮説実験授業」「グループワークトレーニング」「構成的エンカウンターグループ」でよくみる教材や、財や、アクティビティがあります。
さあ、どれだかわかりますか?
これまた感謝です。



一番感謝するのは子ども達。
瑞穂の子、羽村の子、ありがとね。
大きくなってあの頃のことをお酒飲みながら語り合えたらうれしいな。



ただ今、絶賛発売中です。
この本と合わせて、

プロジェクトアドベンチャーでつくるとっても楽しいクラス

プロジェクトアドベンチャーでつくるとっても楽しいクラス


この2冊を一緒に購入されることをお勧めします。
「とっても楽しい・・・」には、ほんとはもっとアクティビティを載せたかったのですが、紙面の都合でカットされたので、それを補完する意味でもこの本を使っていただきたいと思います。
PAJの本は、「正統」です。
理論からしっかり学んでもらいたいなと思います。
この3冊がそろえば最強です。



ではでは、みなさん、アドベンチャーの世界で待ってますよ。
一歩踏み出してみよう!!