坂の上の図書館

よき本に出会えました。

これはいろんな子どもにすすめたい。

そして、大人にも。

 

坂の上の図書館

坂の上の図書館

 

 対象年齢は小5から大人。

テーマは子どもと大人ではずいぶん違うことになると思います。

大人が読むと、「貧困」とか「貧困の連鎖」にぐいっともっていかれる人がいると思います。

私もそうなりました。

胸が苦しくなる感じです。

すごく考えさせられてしまいます。

お母さんの生き様や気持ちは、子どもにはちょっとわからないかもしれない。

作者は、主人公の5年生の女の子春菜にもそれがよくわからないと書いています。

物語の最初の20ページくらいまでに、

「あけぼの住宅」に入居するまでの母子家庭の親子の様子がところどころ書かれているのですが、

たぶん、小学生はさらっと読み流してしまうでしょう。

でも大人が読むと、衝撃が強くて思わず口を押さえてしまいます。

悲惨な感じにならないように、作者がさらっと書いているところもあります。

途中、ところどころお母さんの話が出てくるんですが、

ここでも春菜は詳しく聞こうとしないし、

お母さんの過去に関係しないように(関心がないように)ふるまいます。

ここらへんの心理はブッククラブで問いにするとおもしろいかもしれません。

重篤な病気をかかえる清水くん、

同じアパートに住む春菜と同じく要支援家庭の竜司くん、

そして、両親がいない(最後のほうでわかる)親友の佐久間さん…

春菜を取り巻く友達たちも、

なんらかの生きづらさを抱えています。

繰り返しになりますが、この作者、さらりと書きます。

だから逆に重い…

 

 

小学生が読むと、本(or図書館)と自分との関係にテーマが変わると思います。

春菜の再生の物語なんですが、

そこに「本」「図書館」「司書」がからんできます。

結果的には、お母さんの生き方まで変えてしまいます。

友達たちとも、本との関係の中でエピソードが綴られます。

ブッククラブをすると、ここに自分の経験をつなげて話す子が多いでしょう。

 

 

なんにせよ、子どもにも大人にも読んでほしい本でした。

作者の池田ゆみるさんは、図書館司書です。

読み終わって作者紹介を読んで、「なるほどな」と思ったしだいです。